ROC IA SAGA合同会社の井手です。
オープンイノベーションによる「共創」
昨今、「共創」という概念が聞かれるようになりました。端的にいうと「共創」とは「共に創る」という意味です。私が、この「共創」というキーワードを知ったのは、ノーベル賞を受賞された本庶佑氏の寄稿「ノーベル賞の本庶佑氏が警鐘、必要なのは共に創る覚悟(日経ビジネス)」を読んだときです。本庶氏はこの中で「日本でオープンイノベーションを根付かせるには共に創る覚悟が必要だ」と言っておられます。
既存の農産加工品と勝負してはいけない!
私も、農産加工品(以下、加工品)の開発を行う際、この「共創」について考えさせられました。
つまり、一農家が加工品を作ることは比較的簡単です。例えば、ブドウの規格外品があるから、それをブドウジャムにして、近くの道の駅において販売する。しかし、よく思い浮かべていただきたいです。ブドウジャムが世の中に何種類あるでしょうか?道の駅や地元スーパー、大手スーパーには下手すると1個100円のジャムが無尽蔵に並べられています。POPに「農家が丹精込めてジャム作りました!」と言っても周りの商品の埋もれてしまうだけです。
プロの作り手さえも止めさせる農産加工品開発
私も加工品の試行錯誤をする中でその道のプロの方にお話を聞いたことがあります。みなさんが言われたのは、「加工品は、やめておきなさい。まずは農家であれば本業である生産部分の技術をあげ、加工品は二の次です。加工品を作ったとしても物珍しさだけで、結果、在庫抱えて自体はさらに悪化するよ。」という答えでした。至極、もっともな回答だと思います。
その答えを聞いた時、私はとても心が痛くなりました。「まさか、なんで?」「だめなの?」「本当に?」。でも私は加工品開発と販売に一つの光を見出していました。そこで目に入ってきたのが、冒頭述べた本庶氏の「共創」でした。
売れない経験から学んだ加工品開発の経験
当時は、私も必死(今でもそうですが、笑)で「そうは言っても、でも一度はやってみたい!」と一念発起し、当時、小規模に栽培していたホウレン草を使った野菜ペーストを発案しました。キャッチコピーは「子供も食べれるホウレン草ソース」。ニンニク風味でフランスパンやパスタなどに使える商品です。SNSを通じて友人知人も買っていただき、フィードバックもたくさんもらえました。しかし、後が続かなかったんです。本庶氏の言葉を借りれば、私の「覚悟」が足りなかった。
たくさんの方に応援いただいたにも関わらず、中途半端で尻すぼみになってしまった。「物珍しい商品で、作れば売れる」「きっと誰かが買ってくれる」。そんな甘い考えを持っていたんだと思います。この経験と応援していただいた皆さんのお気持ちは、あとあと私の背中を押してくれるものとなりました。感謝しかありません。
1人で作ることの容易さと1人で売ることの難しさ
加工品開発は、1人で作ることは簡単です。しかし、売るとなると話が変わってきます。今思えば、プロの方はこのことを言っておられたのかな、としみじみ思います(当時は何言ってんだか、と思ってたんです、すみません)。
産学官連携による「ものづくり」
私が行動しないと何も始まらない
私が佐賀大学を卒業しているご縁で、思い切って当時の先生に連絡を入れました。全てはここからスタートしたと言っても過言ではありません。
そこから、大学には、産学官連携室があって民間と大学を繋げてくれる専属のスタッフさんがいらっしゃると、知りました。もちろん、しっかりした課題設定、ゴールをどこに置くかなど、詰めるところは多々あります。大学のスタッフの皆様には貴重な時間を割いていただきました。
大学の皆さんがご協力していただくのなら、高校生にも携わっていただきたい。そんな私の想いを高校側へ伝えるため、突撃で高校に電話連絡を入れ「初めまして…」から連携を作りました。後から想えば、これが農家(私)主導の連携となる所以です。
農家主導による共創について
上図に簡単な産学連携の構図を入れました。これは、巨峰ドレッシング「藤ざくら」を作る上で、三者のメリット、得意とする領域をはっきりさせた上で連携を構築して行きました。大学が得意とする研究、高校の農業教育という視点、農家の課題意識、これらをマッチさせて作ったのが「藤ざくら」です。「藤ざくら」の開発秘話は別の記事にあげることにします。
では、これをすべて真似すればすべての人がうまくいくかというと、そういうわけではありません。理由は、課題を持っている当人(農家)が何を解決したいのか、ゴールはどこか?を明瞭にして、それにあった連携を行う必要があるからです。私はこの連携を構築し加工品を作る過程でたくさん感動し、泣いて、へこんで、怒られて、いろんな経験をしています。この経験をすべて商品に落とし込んだのが「藤ざくら」です。
最後に、世の中に「産学連携による商品開発」は無数にあります。でも、私という個性は誰も真似できません。